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お地蔵さん


今から13年前のお話

 HP用に過去のCD-Rに詰め込んでた写真を整理した。これはまだ、パソコンもデジカメも持ってなかった2007年の飛鳥が25歳の時のお話。もちろん親方の元で弟子をしていた。そう考えると随分と時代は変わっている。コロナで急に時代が変わるなんて勘違いしそうだが、時代はいつでも変わってる。河原町八条のお寺の裏にある、お地蔵さんの地蔵堂と小屋というか物置きを、移転工事させていただいた。材料は栂材を使っている。ツガとかトガって呼ぶ。僕の親方はトガって呼んでいた。関西なのか京都なのか、群馬では使ったことのない材料だった。柾が取りやすく、比較的水に強いのでよく使っていた。


京都のDEEPスポット

 京都に来てから初めて知ったことがある。それは部落問題。学生の頃に授業で受けたことはあったが、どこか他人事だった。褒められたもんじゃないが、日本人は農耕民族やし、元来イジメ気質なんだろう。時代とともに良くなっていけばいいと思う。この神社周辺はいわゆる部落地域の中で、独特の雰囲気があったが、近年はインバウンド需要でゲストハウスやホテル、道路の拡張なんかで随分雰囲気が変わった。その独特の雰囲気の中、仕事をしていたのだが、近所の団地の人はいい人ばかりで、道路なのにココに車停めたらアカンよ、って謎のアドバイスをくれたり、休憩時間には飲み物やお茶菓子、たまに帰って飲みやなんてお酒も頂いた。

服装の違い

 この当時は今とは全然違う服装で、この服装が大工さんって感じでカッコイイと思っていた。親方の真似をしたハンチング帽に、This is 職人のダボシャツ、そしてこだわりの寅壱の七分、足元は寅さんっていう足袋靴だったと思う。当時、寅壱の七分は店頭に置いてなかったから、毎回オーダーしていた。この写真は夏だから来ていないが、この服装に寅壱のジャケットで、上下セットで一万円を超えていた。毎日洗濯したいから、色違いで3セット持っていた。今見ても『職人』って感じでカッコイイけど、さすがに今は着れない。


無事に終わったのに放火にあう

 無事に工事は終わり、ちょうど一年程経った時期に地蔵堂が放火にあった。こんな所に放火して罰があたる、なんて近所のおばあちゃんが言っていたが、どんな場所でも放火はアカンし、罰があたる前に犯罪で、その行為によって困る人がいるということを考えて欲しい。自分がされて嫌なことは、人にしたらアカン。

 よく火事の映像がTVなどで流れるが、家の中が燃えても、柱や梁はすぐには燃え切らない。木造は燃えると思う人がいると思うが、写真を見てもらったら分かるように、放火された布系が燃えた部分が、引火せずに炭化している。準防火地域でも木の化粧材に厚みを持たせて、準防火仕様に出来る。燃えない訳ではなく、火事現場の柱や梁が残るように、燃えるまでに時間がかかるのだ。この逆のパターンで杉の焼板なんかは、あらかじめ燃やして炭化させてしまう。結果、水に強く虫にも強くなる。日本の木造建築は、長い歴史があって、温故知新で発展してきたと思う。京町家なんかは特に面白くて、日本の木造建築は、傷んだ部分を直して使い続ける文化でもあると思う。宮大工の本で読んだと思うが、江戸時代を起点に衰えたなんて言ってたが、果たして今の時代は未来でなんて言われるのだろう?まぁ、直して使えるのが木造建築の魅力なのは変わらないだろう。


直して使える木造建築

 物事を実行するのには、基本的にお金がかかる。お金があるなら、壊して建て直せばいいのかもしれない。でも、もったいないが抜けない日本人は、安いものは使い捨てるが、高いものはもったいないが出てくる。それは、お金が絡むというのもあるが、そこが上手く出来るのが大工さんの魅力だ。初見では、技術と経験は実際蓋を開けてみないと見えないのだが、そこを伝えられるようにHPやブログやSNSを使っていきたい。この地蔵堂も使える部分を使いながら、使用不可能なものは取り替えるという工法をとった。燃えていない部分まで、炭化した部分を取り除き、新しくなったように見せていく。大きな埋め木と思ってもらえたら分かりやすいかなと思う。


言われないと分からないまで持っていく

 放火されようが、放火されてなかろうが、どっちにしろ木造建築は定期的なメンテナンスで、何百年と受け継いでいくことが出来る。さっきの話に戻せば、江戸時代の大工はそのメンテナンスで、手を抜いたという話だ。僕からすれば現存しているのだから、いいじゃないかと思う。そこには、予算や材料の加減もあったはずだ。とにかく、メンテナンス次第で木造建築はどうにでもなるのだ。建てたら終わりになってるように感じる、昨今の住宅建築だが、必ずメンテナンスはして欲しい。そのメンテナンスで、いい大工さんに出会って欲しいと思う。

逆にいい大工として自身がある人は、昨今の時代に合わせて、現場を徹底的に綺麗にしたり、近所の掃除を定期的にしたり、材料を丁寧に扱ったり、煙草を現場で吸わないなり、出来ることをどんどん努力していって欲しい。


人に認めてもらうということ

 最初の写真2枚は2007年25歳の時、そこからの写真は放火があった2008年26歳の時、服装は変わってない。なぜなら、カッコイイと思っているから。ちなみに最初の写真2枚はフィルム写真で、2008年にデジカメを買った。なぜならパソコンを買ったからだ。今思えばの時代だが、カメラやパソコンや携帯が進化したように、自分自身も進化していかなければならない。人に認めてもらうということは、評価してもらうということ。常にお客さんの目線で動ける大工の工務店にしていきたいと思う。ちなみに、今でも職人さんはこういう服装の方が、カッコイイと思っている(笑)