屋根訪問トラブル

書:阿部飛鳥


屋根訪問トラブル、4年で3倍

 表題はリフォーム産業新聞、2023年11月13日号の裏一面にリフォーム業界の課題として書いてある。そもそも、建築業界や不動産業界は営業の業界、営業が仕事を取って来る事で初めて職人さんがお仕事を出来る。すべての人とは言わないが、営業は営業のプロであって、職人でも施工のプロでもない。

問題はなにか?

 まず大前提として自分のお家に興味を持つことだ。このトラブルの前提は訪問販売、点検商法だ。要は突然家に訪問してきて、無料点検と称して屋根に登り、『放置すると瓦が飛ぶだの、雨が漏れてもっと被害が大きくなるだの、近所に迷惑がかかるだの』とにかく不安を煽り、契約をさせる。この契約の問題はあらゆる理由でクーリングオフを逃げ切るという事だ。クーリングオフの条件は申込みや契約をした日から8日以内であれば、無条件で申込みや契約の撤回や解除が出来る制度だ。少しでも不安に感じたら、近所の大工さんのいる工務店か、地域密着型の工務店に相談して欲しい。


訪問販売をどのように防ぐのか

 契約当事者の8割越えが60歳以上と、国民生活センターが報告している。ご本人が注意するのはもちろんだが、ご家族もぜひお声がけして欲しい。

具体的な対策方法

 まずご自身のお家の現状を把握していただきたいです。屋根と外壁は永久に持つものではなく、耐用年数というのがあります。特に訪問販売の被害に会いやすい屋根について記載したいと思います。

 


瓦屋根

 瓦の種類にもよりますが屋根の中で一番耐久性が強く、塗装のメンテナンスが必要ありません。材質と施工方法によっては100年以上持つこともありますが、およそ20年~30年の間にメンテナンスを兼ねて、点検をした方がいいかと思います。また台風などの被害が出てる場合は、漆喰の補修や棟瓦の積み直しなどが必要な場合があります。瓦専門店をうたっている営業店もあるので、不安な場合は地域の工務店に相談してください。


スレート屋根

 スレート屋根の最大の特徴はアスベスト、アスベストがある商品とない商品で大きく耐用年数が変わります。

点検の目安としては、15年~20年に一度、屋根にのぼるかドローンなどを用いた点検をした方がいいかと思います。特にスレート屋根の問題点はアスベストの有無。アスベスト含有商品は1990年代前半までで代表的な商品はニューコロニアルです。問題はアスベストを取り除いた直後の商品で1990年代前半~2000年代半ば頃の施工、代表的な商品はコロニアルNEOやコロニアルパミールです。問題の時期を過ぎると改良商品が出てきて2000年代半ば以降はコロニアルクァッドという商品で施工されています。


スレート屋根の塗装

 塗装のタイミングは色あせしてきたらになります。おおよそ10年~15年に一度がメンテナンス時期になります。塗装の膜が薄くなり、防水性が無くなっていくと思ってもらえれば分かりやすいかと思います。先程説明したアスベストが含まれてないスレート屋根で、1990年代前半~2000年代半ばに製造・施工されたスレート屋根は塗装をしない事がおすすめです。

棟板金の交換

 スレート屋根で最も不具合が多いのが棟板金です。特に台風などの風の影響を受けやすく、施工後1年程度でも棟板金ははがれてしまいます。棟部分は遠めでも確認しやすく、強風の後は目視程度でもいいので確認してください。

カバー工法

 スレート屋根はカバー工法で対応出来ます。ただし、屋根の耐用年数が過ぎてしまうと、野地板の腐食や雨漏りなどが影響し、屋根カバー工法ができなくなってしまいます。対応が出来なくなる前に一度点検する事をおすすめします。


金属屋根

 昨今は金属屋根=ガルバリウム鋼板屋根になりましたが、トタン屋根や銅板屋根も含めて金属屋根です。使用する材質によって大きく耐用年数が変わります。金属屋根の最大の弱みは錆です。錆びによる穴あきが発生する前に、錆止めを含む塗装メンテナンスなど対策をおこなってください。

棟板金の交換

 スレート屋根と同様で最も不具合が多いのが棟板金です。特に台風などの風の影響を受けやすく、施工後1年程度でも棟板金ははがれてしまいます。棟部分は遠めでも確認しやすく、強風の後は目視程度でもいいので確認してください。


屋根の点検とメンテナンス

 屋根リフォームに伴う点検の場合は無料で点検させていただいております。台風や強風の後、屋根施工から10~15年経過しているなど、屋根に登る調査は2~4万円で対応させていただきます。

メンテナンスをしないデメリット

 一番怖いのが雨漏りになります。雨が降る度に屋根の材料が腐食していき、最悪の場合は構造材まで痛めてしまう可能性があります。また、台風などの大規模な自然災害の後は、多くの人が同時に屋根の修理を必要とされます。応急処置としてブルーシートが敷かれた屋根で数か月間過ごすことを、2018年に実際の台風被害で対応させていただきました。40年以上経過したスレート屋根やスレート屋根の下地材(野地板やルーフィング)は著しく機能が低下しますし、1970~80年代の建物は施工の精度もバラつきがあります。あの時頼んでおけば良かったと後悔しないように、定期的かつ早期の屋根の点検とメンテナンスをおこなってほしいです。
※くれぐれも訪問販売にはご注意ください。